めがねぱぱ

9 分

バックトラッキング│ラポールを形成し成果を生み出す傾聴スキル

最終更新: 2021年3月2日

誰にでもすぐに使えて、相手との信頼関係(ラポール)を急速に築くことができるようになる。そんな方法があるなら知りたいですよね。

今回は、ラポール形成の3つの基本テクニックの一つである、バックトラッキングについてお伝えします。

ビジネスで成功している人、プライベートの人間関係がうまくいっている人は、例外なくコミュニケーションに長けています。

「コミュニケーションに長けている」と聞くと、どういった印象を持ちますか?

話しが面白い人、話題が豊富な人。そういった印象をもつ方が多いのではないでしょうか?

確かにそういった面もありますが、コミュニケーションに長けている人とは、話し方が上手いだけでなく、優れた聞き手でもあります。

優れた聞き手は相手に好感や信頼を与え、親近感を覚えさせ、人物評価をあげ、急速に相手との信頼関係を築くことができます。

バックトラッキングを学び実践することで、あなたの傾聴力を高め、成果を生み出すコミュニケーションを身に付けてください。

バックトラッキングとは何か?

バックトラッキングとは、一言でいえば、会話の中で、相手の言った言葉を「オウム返し」し、、相手との信頼関係を築く話の聞き方のことです。例えば「今日は久しぶりに友達と食事に行くんだ」と話しかけられた際に、「友達と食事に行くんだね! 」というように返すことが、バックトラッキングです。

この手法はNLPのコミュニケーションスキルとして重要視されているほか、カウンセリングやセラピーの現場でも用いられています。

バックトラッキングの効力

バックトラッキングによる効果には、主に以下の3つがあります。

  1. ”自分を受け入れてもらえてる”という安心感を相手に与える

  2. ”自分の話を肯定的に聞いてもらえている”と相手に感じさせる

  3. 相手の課題や問題の整理が促される

では、順番に解説します。

1.”自分を受け入れてもらえてる”という安心感を相手に与える

自分の話した言葉を否定されたり、拒否されたりすると、相手に対して抵抗感や違和感が生まれますね。また、自分の話した内容が誤解されたり、歪曲されていると感じた時にも、同様の抵抗感や違和感が生まれます。

あなたが「昨日、ディズニーランドに遊びにいったんだけど、やっぱり楽しいね」と言ったとして、「いや!USJのほうが楽しいだろう」なんていわれたら、それ以上話す気になんてなりませんよね。

そこまでいかなくても、「そうなんだ。アミューズメントパークはどこも混んでるよね」といわれたらどうでしょうか。

「ん?」とちょとした違和感を感じませんか?

自分はディズニーランドに遊びに行ったことを話したいのに、話がアミューズメントパークに抽象度が上がってしまっています。

さらに、「僕もこの前、USJに行ったんだけどめちゃくちゃ混んでてさぁ」なんて話し始めたら、どうでしょう。

会話の主体が自分から相手に変わり、どこか置いてけぼりをくらわされたような感覚に陥りませんか?

話を合わせているようで、相手を置き去りにして自分の話をし始めてしまうことは誰でも経験があるはずです。

しかし、そういう人に対して、人は自分の本音は話したいとは思いません。あなたへの違和感や抵抗感を打ち消し、自分が受け入れられているという安心感を与えるだけでも、相手とのコミュニケーションはスムーズに進み、あなたの印象は変わります。

2.”自分の話を肯定的に聞いてもらえている”と相手に感じさせる

バックトラッキングが効果的なのは、相手に「この人は話をちゃんと肯定して聞いてくれる」という印象を与えられるからです。

単調な相槌だけだったり、すぐに自分の話題へ移ったりされると、「話を聞いてもらっている」という印象は持ちにくいものです。

バックトラッキングは、相手に「私は、あなたの話に興味をもって聞いてますよ」という印象を与えることができます。

バックトラッキングは相手の使った言葉をそのまま活用します。

相手が使った言葉を活用するのですから、相手はあなたの言葉を否定できません。

相手の無意識の中に「そうそう」「そうなんです」といった「YES」が溜まっていきます。

YESが溜まっていくことで、NOができない状態になっていく、否定できない状態になっていくことをYESセットと呼び、相手をオープンにさせ、心をあなたに開いてもらうために使われます。

バックトラッキングは「理解してくれている」、「わかってくれている」、「大切にされている」というとうことを自然に感じてもらう技法であり、自分の話を肯定的に聞いてもらっているという実感を与えることができるものです。

言い換えれば、「私はあなたのことを理解しようとしています」というメッセージを、相手の無意識に届けるスキルが、バックトラッキングということもできます。

3.相手の課題や問題の整理が促される

話しながら考えるという経験はありませんか?

人に話を聞いてもらっているだけで、悩みや問題が整理され、解決できたという経験がある方も多いと思います。

悩み事や相談事などの会話では、具体的な解決策を検討するよりも前に、まずやるべきことは、現状把握であると言われています。その現状把握の際に、バックトラッキングは有効でな手段となります。

相手の話を聞き、相手の言葉を返しながら傾聴することで、相手が自分の考えや思い込みや複雑にもつれた現状を整理することの助けとなります。

違和感をなくし、相手に安心や肯定感を感じてもらいながら、問題を整理して行くことができるようになるわけですね。

その結果、この人に聞いてもらえると、自分の心や頭の中を整理することができるという評価をあなたは受け取ることができるようになります。

成果を出せるコーチ、コンサル、セラピストやビジネスパーソンの多くは、共通してバックトラッキングを活用しています。

バックトラッキングのやり方3種類

では、バックトラッキングはどのように行えばよいのか見ていきましょう。

バックトラッキングには大きく分けて3つの種類があります。

  1. キーワードや語尾をバックトラッキングする

  2. 気持ちや感情をバックトラッキングする

  3. 話しの内容を要約してバックトラッキングする

順番に見ていきましょう。

1.キーワードや語尾をバックトラッキングする

バックトラックは相手が言ったことを繰り返すテクニックですが、必ずしも相手の発言を一言一句繰り返す必要はありません。

キーワードとなる言葉や語尾をうまく利用して繰り返すことで、自然な会話の中でバックトラッキングすることができます。

┃例

A:今日は仕事が忙しくってさぁ

B:へー、忙しかったの

A:今週は毎日終電だよ

B:終電!!それはしんどいなぁ

A:体力はともかく、寝不足でさぁ

B:寝不足だと疲れるよね。週末はゆっくり休めるといいね

あくまでも自然な会話の中で、相手の言葉を繰り返すことがポイントです。

バックトラッキングは相手の言葉を繰り返しますが、そこだけに焦点をあてて使用すると、相手が確認されているような印象をもってしまうかもしれません。

以下のようなバックトラッキングにならないように注意が必要です。

┃悪い例

A:今日は仕事が忙しくってさぁ

B:今日は仕事が忙しかったんだね

A:今週は毎日終電だよ

B:今週は毎日終電なんだ!

A:体力はともかく、寝不足でさぁ

B:体力はともかく、寝不足なんだね

2.気持ちや感情をバックトラッキングする

嬉しい・悲しい・楽しい・不愉快といった感情をバックトラッキングします。感情は、無意識に与える影響が大きく、「この人は自分を受け入れてくれる」という、あなたへの信頼感を生み出すことができます。

┃例

A:課長、いい話があります。例のお客様から契約頂きました!

B:おお!それはいい話だね!!

A:一年かかりましたが、受注出来て、めちゃくちゃうれしいです。

B:そうか、それはうれしいね。私もうれしいよ!

上記に加えて、相手が言葉で表現できていない感情や気持ちを汲み取ってバックトラッキングこともできます。以下に例を挙げてみます。

┃例

A:一年かかりましたが、受注出来て、めちゃくちゃうれしいです。

B:そうか、それはうれしいね。報われたね。私もうれしいよ!

相手が言葉で表現できていない感情を扱うときは、相手が感じている感情とバックトラッキングしたときの言葉がズレないように注意してください。感情とバックトラッキングで使う言葉がずれてしまうと相手に違和感や抵抗感が生まれます。

言葉のズレが起きないように、バックトラッキングに慣れていないうちは、相手が言った感情の言葉を活用してください。傾聴トレーニングを積み、的確に相手の気持ちや感情を汲み取ることができるようになったら、感情をくみ取ってバックトラッキングすることを意識してみてください。

3.話しの内容を要約してバックトラッキングする

話しを聞いていると、相手の話が長く、バックトラッキングを行うタイミングに困ることがあります。

そのような時には、相手の話を一通り聞いた後で、キーワードとなる単語をもちいながら話しをまとめてバックトラッキングします。

つまり話の内容を要約してバックトラッキングします。

┃例

A:昨日、社長から電話があって、人事異動の内示があったんだけど、それが転勤を伴う異動でさぁ、そんな大事な話を電話一本で内示してくるなんて、すごく嫌な気持ちになって、異動の話も前向きに受け止められなくて、結局、週末まで考えせて欲しいっていって電話を切ったんだよ。

B:転居を伴う人事異動の内示を電話一本で!?それは嫌な気持ちになるよね。

このような感じです。

要約によるバックトラッキングでも大切なのは、相手の使った言葉やキーワードです。バックトラッキングを有効に使うために、相手の言葉、キーワードをしっかり聴き取ることを意識してください。

簡単にできるバックトラッキングのうまい使い方

1.バックトラッキング+5W1H

バックトラッキングは相手の言葉を繰り返すものですが、オウム返しのように繰り返すことに違和感を感じるなら、繰り返す言葉に5W1Hを加えることで、自然な会話にすることが出来るようになります。


相手の好意を手に入れる確率を格段に高める方法 NLPバックトラッキングの上手な使い方


「昨日久しぶりに飲みに行ったよ」

「へー飲みに行ったの。久しぶりっていつ以来?」

みたいな感じですね。

バックトラッキング+5W1Hは、かなり使えるトークパターンですので、試してみると良いと思います。

2.うなずく・リアクション・受容ワード

相手が「昨日は飲みすぎたぁ〜」と言ったら「昨日は飲みすぎたんだね」と繰り返す。

単純かつ簡単なスキルのようですが、実際に使うとなると、かなり怪しい会話になります。

そこで、ちょっとしたアレンジを加えることで自然な会話の中でバックトラッキングを使うことができるようになります。

それは…。

  • うなずく

  • リアクション

  • 受容ワード

です。

相手が話している間は、ひたすら「うん、うん」と頷いて聞きます。不自然にならない程度に相手の言葉をバックトラッキングしても構いません。(やりすぎには注意です)

そして、ここ!と言うポイントで「う〜ん!!」と大きくリアクションを取ります。

更に畳み掛けるように「わかる!わかる!」と受容の言葉で相手の話を受け止めるのです。

受容ワードは「わかる!」の他、「だよねぇ〜」とか「そうそうそう!!」のような言葉もありますね。

これで、相手は自分の話を聞いてもらえていると感じて、あなたを信用してくれるようになります。


いかがでしたでしょうか。

ラポール形成テクニックの基本テクニックの一つであるバックトラッキングについてお伝えしました。ミラーリング、マッチングに比べると、簡単に実践することができる傾聴スキルですので、日常生活の中で試してみてください。