リフレーミングとは、「物事を見る枠組み・視点を別の枠組み・視点で見直す」という意味のNLPの概念です。
シェークスピアの名言の一つに次のようなものがあります。
良いものも悪いものもないが、考えることでそうなる。
土砂降りの雨は傘を持たずに外出していれば災難な出来事です。
スポーツの負け試合の中、土砂降りの雨でノーゲームになれば、それは恵みの雨と感じることでしょう。
この記事を読んでいる人の中には、人目が気になると悩んでいる人がいるかもしれません。人目が気になるということは、自分に自信が無い表れだと解釈することもできるし、周囲の期待に応えようとする前向きな姿勢の現われだと考えることもできます。
起きている事に良いも悪いもなく、ただそこにあるだけ。
物事に意味を付け判断をしているのは、私たちの心の中の枠組みに過ぎません。
リフレーミングは、心理的枠組みによって人や物事への印象や意味を変化させ、心身を有効な状態にしていくNLPの技法です。物事に対する見方を変えて気分や感情をコントロールする効果がある技法として、現在では広く活用されています。
リフレーミングを日常的に使えるようになると、心の状態が一瞬にして変わり、選択肢が増え、あなたの本来の目的に向かって行動しやすくなります。
それでは詳しく見ていきましょう。
┃視点が変われば世界が変わる
下の絵を見てみて下さい。
さて、何が描かれていると思いますか?
向かい合う二人の人の顔に見える方もいれば、黒い壺に見える方もいますよね。
そうです。有名な「ルビンの壺」です。
人の顔にも見えるけど、壺にも見える。
このことに気づけば、一枚の絵に二つの存在を発見できます。
物事に対してネガティブな意味づけをして目を背けてしまうのではなく、視点を変えて考えてみることで、これまでとは別の世界が広がっていくことがあるのです。
┃リフレーミングの2つの種類
視点を変えて世界観を変え、選択肢を増やすリフレーミングの種類は大きく分けると2つあります。
一つは「状況のリフレーミング」。
環境や状況を変えて物事を捉えるリフレーミングの手法です。
もう一つは「内容のリフレーミング」です。
こちらは状況や環境は変えずに、意味づけを変えることで、物事を新しい視点でとらえることを促します。
それぞれのリフレーミングが、どのようなものなのか、見ていきましょう。
┃状況のリフレーミング
「状況のリフレーミング」とは、物事や人の行動が、「他のどのような状況ならば役立つか?」と、状況や環境について見直すことです。
目の前で起きた出来事や人の行動が、プラスに働く状況や環境に焦点を当てるようにアプローチします。
例えば、こうと決めたら絶対に譲らない頑固者。
本人も「柔軟性がない自分は役に立てない」と悩んでいます。
こんな人には「譲れない交渉事の場では心強い味方だよ」と声をかけてあげることで、「あなたが役に立つ場面があるんだ」というメッセージを与えることが出来るのです。
物事の例でいえば、私たちが普段使っている付箋の例があります。
接着剤の開発としては失敗した液体を、「くっついては剥がれる」という特性に注目し、役に立つ場面や状況に目を向けた結果、付けて剥がせる文房具として世に広まった例です。
物事がうまくいってなかったり、望ましくない行動に悩む人を見たとき、「これは他のどこで役立つだろうか?」と考える。これが状況のリフレーミングの基本です。
┃内容のリフレーミング
内容のリフレーミングは、状況を変えずにそのものが持つ状態や意味を見直すものです。
視点を変えて、物事や人の行動が持つ意味を変えることで、明るい未来をイメージしたり自分を肯定的にとらえたり、前に進む力付けにすることが出来るのです。
ここでも例を挙げてみましょう。
「自分はいつも人の目を気にして委縮してしまう」と悩んでいる人がいたとします。そんな時には「周囲の期待に応えようと常に意識しているんですね」と声をかけてみましょう。「人の目を意識しているのは、期待に応えようと努力しているということだ」と意味を変えることで、その人の自己認識を高めるメッセージを送ることが出来ます。
物事の例でいえば、電車が事故で止まってしまい帰宅時間が遅くなってしまった状況があったとします。
「疲れているのに。ついてない」と嘆くのではなく、「カフェに寄って、リラックスしながら本を読む時間が出来た」と枠組みを変えて状況を捉えなおすことで、イラつく気持ちを癒すことが出来るようになります。
内容のリフレーミングの基本は、人や物事が持つ意味や、内容の枠組みを変えることで、肯定的な捉え方を促すことです。
┃リフレーミングはポジティブシンキングとは違う
こうしてみると、リフレーミングはポジティブシンキングのことだと思う方がいらっしゃるかもしれませんが、それは違います。
ポジティブシンキングは「(出来ていなくても)まぁいいか」とか「今うまくいってないのは本気出してないだけだから大丈夫」など現実を無視して、望ましい未来に繋がらない危険をはらんだ考え方につながることがあります。
「私は短気だ」という考えに対して「即断出来るだけの強い意志がある」というのがリフレーミング。「正確に良し悪しはないんだから、そのままでいいんじゃない?」というのがポジティブシンキングです。
特定の行動や出来事に対して、その視点や枠組みを変えるのがリフレーミングです。焦点を当てるところによって、様々な解釈が可能になります。
そして、自身にとってより良い変化を望める視点や枠組みを選択することが大切になります。
┃リフレーミングは過去の経験や出来事にも使える
リフレーミングは今起きている出来事や悩ましい行動に対してだけでなく、過去の出来事や経験に対しても活用することが出来ます。
例えば「親が自営業で土日も休みなく働いていたので、家族旅行の思い出もない。運動会や授業参観にも来てくれなくて、寂しい思いをして子供時代を過ごした」という記憶を持つ人がいたとします。
その記憶を「親が自営業で土日も休みなく働いていたので、細かなことを言われることもなく、自由にさせてくれたので自主性や独立心の高い人間に育った」とか「両親と過ごす時間が少なかったおかげで、大切な人と過ごす時間の素晴らしさを誰よりもわかるようになった」というリフレーミングをすることもできます。
暗くネガティブな印象を持っている過去の経験でも、視点を変えて捉えなおすことで、明るく前向きな内容に捉えなおすことが出来るようになります。
┃出来事や人の行動そのものに意味はない。意味を与えているのは心のフレーム
シェイクスピアのハムレット。有名なセリフと言えば
To be, or not to be: that is the question.
(生きるべきか、死ぬべきか。それが問題だ。)
ですね。
もう一つ、なぜか日本ではあまり取り上げられることが少ないようですが、冒頭でご紹介した、私がとても好きなセリフがあります。
There is nothing either good or bad, but thinking makes it so.
(良いものも悪いものもないが、考えることでそうなる。)
日本語訳は私が付けたので、専門家の方がみればちょっとニュアンスが違うかもしれません(笑) 物事には初めから善悪の区別などない。良いも悪いも考え方ひとつだ。というほどの意味でしょうか。
NLPでいうリフレーミング。
起きている物事に意味はなく、そこにどのようなフレーム(枠組み)を用いたかによって、私たちは感情や思考や行動に影響を受けます。
うまくいっていない状態は、今のフレームでは機能しないという学びの機会です。
物事は中立です。NLPのリフレーミングの技法には、さまざまなアプローチの方法があります。リフレーミングを活用し、制限を緩め、選択肢を増やしながら、より理想の状態へと進んでいって下さい。