表象システム
人は同じ体験をしていても見えているもの、聞いているもの、感じているものがそれぞれ異なります。
私たちは五感を通じて世界を体験し、体験した内容に自分なりの意味づけをして反応しています。この「五感を通じて」「自分なりの意味づけ」というところに、私たちが同じ経験に異なる反応を示す理由の一つがあります。
嵐の中でキャンプをして、「ワクワクドキドキの冒険だったね!」と楽しそうに語る人もいれば、「さんざんな目にあったよ。二度とごめんだ」と感じる人もいます。
今回は、この反応の違いに影響を与える、NLPの表象システムについてご説明します。
相手に届き、行動を促す言葉選びができるようになる確率を高める。
いわゆる「刺さる言葉」を使う。
表象システムを理解することは、そのために役に立ちます。
目次
表象システムとは
まず、NLPの表象システムについて、それが何なのかみていきましょう。
表象とは
まず、「表象」とは、脳内で構築された内的な対象(世界)のことを指します。
日常、なじみのない言葉ですが、哲学、心理学、認知科学などではよく使用されています。
英語では《 representation 》と表記し「代表すること、象徴すること」という意味があります。
表象は自分の外からの情報で知覚されることもあれば、過去の記憶や自分の価値観などから現れることもあります。
色や風景は目で見て知覚し、人の話は聴いて理解し、食べ物は味わう、香りを嗅ぐ、などいろいろな知覚のチャンネルから私たちは表象し、またそれを組み合わせています。
システムとは
システムとは、相互作用が働いたり、秩序立てられたりすることによって機能する、仕組みや一つのまとまりのことです。色々な知覚チャンネルから表象されたものを、どのように組み合わせているかということをさして「システム」と呼びます。
私たちの表象の仕方(システム)が、世界を認識する土台になり、認識された世界をNLPでは「地図」とか「世界モデル」と呼びます。
NLPのコミュニケーションモデル
私たちは情報を五感を通じて取り入れ、自分の中にある様々な無意識のフィルターを通じて情報の一部を削除したり、捻じ曲げたり、一般化したりしています。

無意識のフィルターとは、人が物事に意識を向けた際に無意識に使っている心のフィルターで、神経学的フィルター、社会的圧力のフィルター、自身の価値観などがあります。
そして削除・歪曲・一般化した情報に自分なりの意味づけを行い、心のプログラムがそれに反応して、外側の振舞いや行動、内側の反応として現れます。
加速学習分野で著名なコリン・ローズによれば、人の記憶力や理解力、認識力などを高めるのにも、五感の力をフル活用することが有効だといいます。記憶したい言葉を「映像化」したり、「音声」で聞いてみるというものです。
五感は内界でも働く
さらに、私たちは外側の世界(外界)でだけでなく、自身の内側の世界(内界)でも五感を使っています。
「昨日の夜、何を食べましたか?」と訊かれると、食べたものが脳内で映像として思い浮かんだり、食事の時の会話が音声で再生されたり、食べた物の味や食感やそのときの感情や、匂いを再生されたりしますね。
「黒板に爪をたてて引っ掻いたことを想像してみてください」と言われれば、不快な感覚に襲われ身震いするという方も多いのではないでしょうか。
このように、外界や内界で使われる五感のことをNLPでは表象システムと呼んでいます。
NLPの表象システム
NLPでは、この五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)を、V.A.Kという3つの括りで考え、表象システムと呼びます。

これらの頭文字がV.A.Kです。
このVAKをフル活用することで、自分自身とのコミュニケーションはもちろん、他者とのコミュニケーションの可能性も格段に高まると考えられています。
優位表象システム
突然ですがこの画像を見てください。

一目見て、どのような感想を持ちましたか?
綺麗だな
寒そうだな
静かな場所だな
高い山だな
人それぞれの感想があると思います。
この感想の違いに影響を与えているのが、表象システムであるとNLPでは考えます。
視覚、聴覚、体感覚のそれぞれを使って「見たもの」「聞いたもの」「感じたもの」を整理し、経験として認識してるわけです。
そして、人はそれぞれ自然と好んで優先的に使っている感覚があって、それを優位表象システムと呼びます。
それぞれの優位表象システムについて、その特徴をみていきましょう。
視覚優位(V)の人
視覚優位(V)の人は映像やイメージ、図など視覚的な要素を使って物事を捉えることを好む傾向があります。視線が上を向く傾向があり、会話の中に「見通しがつく」「○○のように見える」といった視覚に関連する言葉や、「キラキラ」などの視覚に関わる擬音語を使った表現を使う傾向があります。また、自分の中にあるイメージを手を使って表すことを好む傾向があります。
聴覚優位(A)の人
聴覚優位(A)の人は、音や言葉に敏感で、数字やデータを重視しながら物事を捉える傾向があります。視線が左右に良く動き、会話の中に「リズムがあう」「○○と聞こえる」といった聴覚に関連する言葉を好んで使います。また、自分の中での内部対話が多い傾向があるのも聴覚優位の特徴です。
体感覚優位(K)の人
体感覚優位(K)の人は、物事を判断するときにも感覚や直感、あるいは直接触れることを好む傾向があります。視線は下に向きがちで、会話の中に「感じる」「思う」「ドキドキ」「ワクワク」といった感覚的な表現を好んで使います。
叙述語
上記にも述べたように、その人の優位表象システムは、その人の使う言葉や視線から推測することが可能です。
ここでは優位表象システムごとの、良く使われる言葉、叙述語をご紹介します。
視覚優位(V)
・見る
・描く
・映す
・ひらめく
・明るい
・暗い
・明確な
・鮮明な
・注目する
・ビジョン
・見通し
※キラキラ・ピカピカなどの「視覚に関連する擬音語」
※バラ色の〇〇、真っ青な○○など「色を使った表現」
※輝く、透明、まぶしいなど「視覚表現」
聴覚優位(A)
・聞く
・言う
・話す
・歌う
・説明する
・唸る
・ささやく
・テンポ
・声
・音
・発言
※「シーン」「ザワザワ」など音に関する擬音語
※「大声」「うるさい」「静か」など音の大きさに関連する表現
※「甲高い」「高い・低い」「野太い」などトーンを表す表現
体感覚優位(K)
・感じる
・柔らかい
・押す
・まったり
・のんびり
・緊張
・リラックス
・曲げる
・投げる
・触れる
・ソフト
※「暖かい」「寒い」「熱い」「冷たい」など温度に関する表現
※「ふわふわ」「すべすべ」「ざらざら」など素材に関する表現
※「苛立つ」「嬉しい」「不安」「安心」など感情を表す表現
※「甘い」「辛い」「苦い」「すっぱい」など味覚に関する表現
言葉のはしばしに現れるこれらの叙述語をよく聞くことによって、その人の優位表象システムを推察することが可能になります。
そして、その優位表象システムにマッチングしながら、こちらも相手に合わせた叙述語を選択することで、相手にとって受け取りやすい言葉がけが出来るようになります。
優位表象システムはタイプ分けではない
ここで一点注意していただきたいことをお伝えします。
それは「優位表象システムとは人をタイプ分けするものではない」ということです。
人は置かれた状況によって、その状況に対応するために心の使い方を変えています。仕事では几帳面で計画的に行動する人が、家ではだらしなく先延ばし癖がある、などということは良くある話です。
同様に、優位表象システムも、その人が置かれた状況(NLPではコンテクストと呼びます)によって変化するということを理解しておく必要があります。
「あの人は視覚優位だから」と決めつけてはいけません。
常に相手を良く観察し、聞き耳を立てて、その時々での相手の優位表象システムを推察し、適切なコミュニケーションを心がけることを意識してください。
優位表象システムは、その時々の「くせ」のようなものなので、その感覚だけを使って物事を受け止めているわけではありませんが、相手の優位感覚を知っていれば、効果的なコミュニケーションができるようになります。
優位表象システムを使った言葉がけの例
優位表象システムを使った言葉がけを、友人を旅行に誘うという例で見てみましょう。
視覚優位
「真っ白な雪に覆われた山から登る朝日が凄く綺麗な場所らしいよ!」
聴覚優位
「静かな宿で、川のせせらぎを聞きながら温泉に浸かって過ごさない?」
体感覚優位
「今の季節は風が気持ちいいからツーリングに出かけない?夜は美味しいお酒とご飯でゆっくり過ごせる宿を見つけたんだ!」
いかがでしょうか。
旅行に誘うという行為は同じでも、相手の優位表象システムを意識して誘ってみることで、良い反応が得られる可能性は高まります。
逆に相手の優位表象システムを無視して、自分の優位表象システムで表現した言葉を押し付ければ、相手にはピンとこないでしょう。
いかがでしたでしょうか。
コミュニケーションとは、人の間で行われる知覚・感情・思考の伝達のことです。自分本位の言葉で「伝える」ことはできても、その言葉が相手に「達する」ことがなければ成立しません。
成果を生み出すコミュニケーションとは、いつでも相手の側に立ち、相手が受け取りやすい言葉を選択して伝えることで成立します。
NLPの表象システムを理解し、日常の中で実践することは、成果を生み出すコミュニケーションを実践することの助けとなります。
まさに「地図は領土ではない」ですね。